新法令・通達の解説
(平成27年8月4日までの公布分)
- 職務発明に関する特許を取得する権利を当初から企業帰属とすることが可能に
- 平成27年7月10日法律第55号=特許法等の一部を改正する法律
グローバル化に向けた知的財産制度の見直しを図るため、特許法の一部が改正されました。
(1)改正の背景
職務発明についての特許を取得する権利は、従来は、発生した当初から発明者個人に帰属し、企業がこの権利を取得するには相当の対価を支払うとされていました。
しかし、相当の対価の額を巡ってトラブルが多発したことから、産業界からは企業帰属に改正するよう要望が出されていました。
(2)改正の概要
改正のポイントは、次のとおりです。
- 【1】
- 従業者等がした職務発明については、契約、勤務規則その他の定めにおいて、あらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その発生したときから使用者等に帰属するものとする
- 【2】
- 従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等に特許を受ける権利を取得させた場合には、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有する
- 【3】
- 経済産業大臣は、発明を奨励するため、産業構造審議会の意見を聴いて、契約、勤務規則その他の定めにおいて相当の金銭その他の経済上の利益について定める場合に考慮すべき使用者等と従業者等との間で行なわれる協議の状況等に関する事項について指針を定める
- 【4】
- 特許料を10%程度引き下げると同時に、商標登録料を25%程度、更新登録料を20%程度引き下げる
(3)改正による影響
職務発明における特許を取得する権利について、発生当初から使用者等に帰属させることができるのは、その旨の規定が契約や就業規則等で定められていることが条件となります。
また、条文上「対価」が「利益」と変更され、金銭以外での経済上の利益を含める改正となっています。
(4)施行日
平成27年7月10日から1年を超えない範囲内で政令で定める日です。
その他の新法令・通達
- 建築物エネルギー消費性能向上法が創設
- 2020年までの省エネ基準適合義務化の一環として、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律が創設されました。施行日は、一部を除いて、平成27年7月8日から1年を超えない範囲内で政令で定める日です。
- (平成27.7.8 法律第53号=建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)
- 企業情報の漏洩防止のため抑止力の向上を図る
- 企業情報の漏洩防止に向けて抑止力の向上を図るなど、不正競争防止法の一部が見直されました。施行日は、平成27年7月10日から6か月を超えない範囲内で政令で定める日です。
- (平成27.7.10 法律第54号=不正競争防止法の一部を改正する法律)
- 新規中小企業者の受注機会の増大
- 官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律等の一部が改正され、起業後10年未満の企業等について国等からの受注機会の増大を図るよう努めることなどが定められました。施行日は、一部を除いて、平成27年8月10日です。
- (平成27.7.15 法律第57号=官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律等の一部を改正する法律)
- 災害で生じた廃棄物の処理について規定
- 災害で生じた廃棄物について規定されるなど、廃棄物処理法の一部が改正されました。施行日は、平成27年8月6日です。
- (平成27.7.17 法律第58号=廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び災害対策基本法の一部を改正する法律)
- 雇用保険の基本手当日額が公表
- 8月1日から適用される、雇用保険の基本手当日額が公表されました。
- (平成27.7.21 厚生労働省告示第321号=雇用保険法第18条第1項及び第2項の規定に基づき同条第3項に規定する自動変更対象額を変更する件)
- 労災保険の年齢階層別の最低限度額・最高限度額が公表
- 8月1日から適用される、労災保険の年齢階層別の最低限度額および最高限度額が公表されました。
- (平成27.7.28 厚生労働省告示第326号=労働者災害補償保険法第8条の2第2項各号の厚生労働大臣が定める額を定める件)
出典・文責 ≫ 日本実業出版社・株式会社エヌ・ジェイ・ハイ・テック